学校法人シモゾノ学園の理事長兼校長。動物が生きる喜びをかみしめることができる社会、人と動物が本当の意味で共存共栄できる社会を目指す愛犬家。
-
第23回川嶋 舟氏
-
第22回吉田 太郎氏
-
第21回動物看護業界座談会
-
第20回ペットサロン業界座談会
-
第19回柴内 裕子氏
-
第18回有馬 もと氏
-
第17回土居 利光氏
-
第16回動物看護師統一認定試験についての座談会
-
第15回小倉淳氏
-
第14回山田かおり氏・金井寛貴氏
-
第13回平野井浩氏
-
第12回災害動物救援ボランティア座談会
-
第11回小森伸昭社長
-
第10回増井光子先生
-
第9回森裕司教授
-
第8回山口千津子先生
-
第7回松本壯志先生
-
第6回西川文二先生
-
第5回小林節先生
-
第4回中嶋宏一社長
-
第3回瓜生敏一社長
-
第2回動物看護師の国家資格化に向けての座談会
-
第1回山根義久先生
- バックナンバーはこちら
動物介在療法~ウマがヒトにもたらす恩恵
2019年3月10日
1998年 麻布大学獣医学部獣医学科卒業獣医師
2004年 東京大学院農学生命科学研究科獣医学専攻博士課程修了 博士(獣医学)
2005年 東京農業大学農学部講師
2006年 東京農業大学農学部バイオセラピー学科動物介在療法学研究室講師
2018年 東京農業大学農学部デザイン農学科生活デザイン農学研究室 准教授
動物介在療法の現在
下薗:動物介在療法について、2006年 シモゾノ学園年次大会の講演にご登壇いただいた後、変わったことはありますでしょうか。
川嶋:大きく変わったと思うのは2011年の東日本大震災です。私自身も福島県で被災し、支援活動をするなかで、ヒトというのは生きていく上で何かの役割がないと生きづらいということに気が付きました。
ホースセラピーで社会と関わるキッカケを作れたとしても、適応できずに戻ってきてしまうことがあるのは何故だろう、と改めて今まで感じていた疑問について考えました。社会で自立できること、社会と関わり続けられること、居場所があること、生きがいを見つけることが必要だということに気が付き、自立支援、就労支援まで考えるようになりました。
下薗:点と点を繋いで、広げていったということですね。
川嶋:私が関わるホースセラピーの対象者についても広がりました。障がいを持たれている方だけでなく、社会で生きにくさを感じる、高齢者、ひきこもり、うつ、不登校、虐待、PTSDを抱えている方、受刑者の社会更生も考えるようになり、対象者は非常に広がりました。これらを含めて実際にホースセラピーをするときの一つの目指す所となり、私自身のアプローチも変わってきました。
下薗:川嶋先生ご自身、ということは周りに関わる方々にも変化があったのでしょうか。
川嶋:はい、周囲にも変化がありました。今まで以上にいろいろな方に協力頂けるようになりました。どのように自立に繋げるかにアプローチしたことで、ホースセラピーの価値が見えやすくなり、よりヒト寄りになったということだと思います。
下薗:野暮な質問ですが、ウマを中心に起用している理由を教えてください。
川嶋:一般的に言われていることですが、ウマが嫌いなヒトが少ないということが挙げられます。イヌやネコですと、ある一定数、嫌いなヒトがいます。
下薗:イヌやネコですと、存在が近すぎることも理由にあるのでしょうか。
川嶋:そうだと思います。一つ目の特徴には、イヌやネコに嫌いな方がいらっしゃるのは、普段の生活でのイヌやネコとの触れ合いの中で様々な経験をされているためだと思います。
二つ目には、乗ることができることです。相手を受け入れて、信頼し、身を任せなければなりません。
三つ目には、人間とウマとの関係が、人間の世界に非常に似ていることです。相手に主導権を渡すのか、自分が主導権を持つのか、常に相手との関係を調整しています。イヌは忠誠心を持ち、関係性が確立すると比較的変化しにくいと私は思っています。しかし、ウマは、朝、自分に主導権があっても、お昼には関係が変わることもありますので、そういう意味では常に関係が変化する人間の社会に似ています。
下薗:なるほど。ウマはどうしてそのように状況が変わっていくのでしょうか。
川嶋:ウマが草食動物であることが大きな理由になります。ウマは武器を持たない動物なので。自分の身を守るために、誰をリーダーにするかということを常に考えています。例えば、他個体をリーダーとして従おうとしていても、その役割を果たせなければ、自分が主にならないと身を守れないという生き方をしています。
下薗:そのような特徴は、ウマの群れの中に人間が入っていかなくてもわかることなのですか。
ウマとヒトが一対一の関係でわかることなのですか。
川嶋:はい、一対一のときでも分かりやすいですし、よりはっきりと出るようにと思います。
下薗:そこまでウマと関わったことがないので、知りませんでした。
川嶋:そうですね、日本はウマが少ないですから・・・
下薗:ウマという素晴らしい存在がありますから、日本の中でもっと活かしたいですね。